海外FXは損益通算が重要!対象となるものや節税効果について解説
海外FXは損益通算が可能です。
思いの外利益が出てしまった場合や、大きな損失を被ってしまった場合、他の収入との合算により節税などのメリットを受けられることがあります。
しかし、損益通算や税金の知識、海外FXの税金について理解しておかなければ適切な損益通算ができません。
税金を多く払うことになる、あるいは思いがけず脱税となってしまう恐れも否めないのです。
そこでこの記事では、海外FXの損益通算について基礎知識から解説し、国内FXとの違いや見込まれる節税効果などにも触れていきます。
海外FXの利益を確定申告する方は、ぜひ参考にしてみてください。
海外FXに重要な損益通算とは?
まずは、海外FXで重要な損益通算について2つのポイントに分けて解説していきます。
- ・他所得と損益を相殺する制度
- ・海外FXで損益通算が必要な理由
他所得と損益を相殺する制度
損益通算とは、他所得と損益を相殺する制度です。
国税庁によれば次のように定義されています。
損益通算とは、各種所得金額の計算上生じた損失のうち一定のもの(損益通算の対象となる所得の範囲(1)から(4)記載の所得)についてのみ、一定の順序にしたがって、総所得金額、退職所得金額または山林所得金額等を計算する際に他の各種所得の金額から控除することです。 |
引用:No.2250損益通算
簡単に言うと、同じ年に生じた赤字と黒字を相殺することを言います。
例えば、Aの事業では200万円の利益、Bの事業では100万円の損失となった場合、それぞれを相殺して100万円の利益とすることができます。
損益通算を行わなかった場合、Aの事業で得た200万円がそのまま所得となるため、200万円分の税金を支払わなければいけません。
しかし、損益通算をすることで所得を100万円に抑えられるため節税効果が見込めるのです。
海外FXで損益通算が必要な理由
海外FXで損益通算が必要な理由は、海外FXの利益は総合課税が適用される雑所得に分類されるためです。
総合課税とは同じ所得区分の所得合計額に対して税額を計算する課税方法を言います。
つまり、1つの海外FX業者で得た利益だけに税金がかかるのではなく、同じ雑所得である所得額の合計に税金が発生するということです。
そのため、海外FXの利益はその他の雑所得と損益通算を行い、合計の所得を算出する必要があります。
海外FXの利益と合算できるその他の雑所得は、広告収入やECサイトで得た収入、他の海外FX業者で上げた利益などです。
海外FX:300万円 広告収入:50万円 ECサイトの収入:30万円 その他の海外FX:-250万円 損益通算した雑所得の合計額:130万円 |
雑所得の合計額を算出した後、総合課税が適用されるその他の所得と合計し、課税所得を計算します。
参考:雑所得の計算方法
海外FXと国内FXにおける損益通算の違い
海外FXと国内FXにおける損益通算の違いは、損失繰越が可能かどうかです。
まず、海外FXは損失繰越ができません。
1年目に50万円の損失を被り2年目に100万円の利益となった場合、その100万円は全額が課税所得となります。
一方で、国内FXは1年目に50万円の損失となり2年目に100万円の利益を得た場合、損失繰越をすると2年目の課税所得は50万円に抑えられます。
また、海外FXも国内FXも同じ所得区分内であれば損益通算が可能です。
それぞれ損益通算ができるその他の所得は次の通りです。
海外FX | 国内FX |
---|---|
その他の海外FX業者の損益、広告収入やECサイトでの売上 | その他の国内FXの損益、国内業者におけるオプション取引や先物取引 |
ただし、海外FXと国内FXの損益通算はできません。
海外FXと国内FXの両方を利用している場合は注意が必要です。
海外FXで損益通算可能なもの
ここからは海外FXで損益通算可能なものについて詳しく解説していきます。
- ・他海外FX業者の損益
- ・副業による収入
- ・公的年金の雑所得
他海外FX業者の損益
1つ目は他海外FX業者の損益です。
例として次のようなケースが挙げられます。
海外FX業者A | +300万円 |
---|---|
海外FX業者B | +150万円 |
海外FX業者C | -230万円 |
合計 | 220万円 |
それぞれの海外FXの利益を損益通算し、合計の金額が課税所得となります。
海外FXは業者ごとに特徴を活かすため、取引方法ごとに業者を分ける場合は損益通算ができることを押さえておくと良いでしょう。
副業による収入
副業による収入も海外FXと損益通算が可能です。
副業による収入は次のものが挙げられます。
- ・ブログの広告収入
- ・ECサイトでの売上
- ・Youtubeの広告収入
雑所得の定義はその他の所得区分に当てはまらないものとされているため、雑所得になるか迷った場合は参考にすると良いでしょう。
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。 |
引用:No.1500雑所得
一方で、副業のアルバイトなどは給与所得であり、雑所得に当てはまらないため、海外FXをしながらアルバイトで給与を得ても損益通算はできません。
公的年金の雑所得
最後に公的年金の雑所得が挙げられます。
雑所得となる公的年金は次のものが挙げられます。
(1)国民年金法、厚生年金保険法、公務員等の共済組合法などの規定による年金 (2)過去の勤務により会社などから支払われる年金 (3)確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金 (4)外国の法令に基づく保険または共済に関する制度で(1)に掲げる法律の規定による社会保険または共済制度に類するものに基づいて支給を受ける年金 |
年金受給者かつ、海外FXの恩恵がある場合は損益通算が必要のため注意すると良いでしょう。
なお、生命保険や個人年金など民間の年金は雑所得には該当しません。
海外FXで損益通算不可なもの
海外FXで損益通算ができないものもあります。
次の3つは海外FXで損益通算できると勘違いしやすい代表的な所得です。
- ・国内FXの損益
- ・給与所得
- ・事業所得
国内FXの損益
国内FXの損益は海外FXと損益通算できません。
海外FXの損益と国内FXの損益は同じ雑所得に区分されますが、課税区分が異なります。
海外FXは総合課税であるのに対して、国内FXは申告分離課税です。
国内FXの損益は他の所得と分離して税率を計算しなければいけないため、2つを損益通算することはできません。
海外FXで利益をあげ、国内FXで損失を出している場合、海外FXの利益は全額所得となり税金がかかるということになります。
海外FXと国内FXの税金に関する違いは次のとおりです。
海外FX | 国内FX | |
---|---|---|
所得区分 | 雑所得 | 雑所得 |
課税方式 | 総合課税 | 申告分離課税 |
税率 | 15%~55%(所得税+住民税) | 20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税) |
損失繰越 | できない | 3年間は可能 |
給与所得
給与所得も海外FXと損益通算はできません。
給与所得にかかる税金と海外FXにかかる税金はそれぞれ算出し納める必要があります。
そのため、給与所得として400万円、海外FXで100万円の損失を出している場合でも、給与所得の400万円にかかる税金をしはらわなければいけません。
会社員をしながら海外FXで損失を出しても、給与にかかる税金を減らすことはできないため、副業で海外FXをしている方は注意が必要です。
事業所得
事業所得も海外FXと損益通算ができません。
海外FXは雑所得であり、事業所得とは所得区分が異なるためです。
独立や開業によって個人事業主をしながら海外FXをしている場合でも、損益通算はできません。
ただし、法人化して海外FXの法人口座で取引をしている場合は、事業所得となるため、その他の事業で得た所得と損益通算が可能です。
海外FXで安定して大きな利益を挙げられるようになれば、法人化も検討してみると良いでしょう。
海外FXの損失分は損失繰越が可能?
海外FXの損失分は損失繰越ができません。
損失繰越は、その年に計上した損失を次の年に繰り越せる税制上のルールです。
損失は利益と相殺できるため、翌年に繰り越すことで、次の年の利益とも相殺することができます。
国内FXや株取引の損失分は3年間の損失繰越が認められています。
年間を通して損をした場合でも確定申告をしておくことで翌年の節税効果が期待できます。
前年のFXの損失150万 今年のFXの利益200万 損失繰越:-150万 + 200万=50万円 |
しかし、海外FXでは損失繰越が認められていません。
損失をいくら出しても翌年の損失として計上できず、年の初めにリセットされます。
前年のFXの損失150万 今年のFXの利益200万 損失繰越不可:200万 |
損失繰越ができると勘違いしている場合は注意が必要です。
例えば、前年の損失繰越ができると思い込み、その年にあげた利益に対する税金が少なく済むと勘違いして、利益を使い込んでしまうと税金が支払えなくなってしまう恐れもあります。
海外FXの損益通算による節税効果
この章では海外FXの損益通算によってどれほどの節税効果があるか解説していきます。
海外FXで600万円の利益がある場合、税金は次のとおりになります。
6,000,000円×20% – 427,500円=772,500円(課税額)
次に、海外FX業者Aで600万円の利益、海外FX業者Bで250万円の損失があり、損益通算をした場合は次のような税金となります。
6,000,000円 – 2,500,000円=3,500,000円
3,500,000円×20% – 427,500円=272,000円(課税額)
上記のように、損益通算をして課税所得を少なくすることで支払う税金も減らすことができます。
海外FXはブログの広告収入やネECサイトの売上などと損益通算できるため、活用すると良いでしょう。
ブログの広告収入やECサイトの売上による課税所得を減らすために、海外FXと損益通算することも可能です。
海外FXは仮想通貨取引と損益通算が可能
海外FXは仮想通貨取引と損益通算が可能です。
仮想通貨取引による損益は雑所得であり、課税方式は総合課税になるため、海外FXの損益と所得区分が同じとなるためです。
問 暗号資産取引により生じた利益は、所得税法上の何所得に区分されますか。 答 暗号資産取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。 |
例えば仮想通貨取引で100万円の損失、海外FXで200万円の利益を上げていた場合、2つを損益通算すると所得は100万となります。
また、仮想通貨取引は、海外業者や国内業者といった取引をしている業者に関係なく、全てが雑所得であり総合課税の対象となります。
そのため、国内FXと国内業者で仮想通貨取引を行っている場合、両者を損益通算することはできません。
参考:https://ur-buddy-cpa.com/blog/cryptocurrency/20210907212433-1446/
まとめ
海外FXの損益通算についてまとめると次のようになります。
- ・海外FXの損益は雑所得に区分され、総合課税が適用される
- ・その他の雑所得と合算した金額に課税されるため損益通算が必要である
- ・その他の海外FXの損益や副業収入などと損益通算が可能である
- ・国内FXの損益と損益通算することはできない
- ・損益通算は節税効果も見込める
海外FXは利益が大きくなるほど税金も多くなるため、損益通算をうまく活用することで、所得を抑えられ節税することができます。
ただし、損益通算できるものやできないものがあるため、確定申告前にしっかりと確認しておきましょう。